「多摩ニュータウン在住サラリーマン夫妻の生活時間調査から見た親子の共有時間の実態と家庭科教育の課題」
【目的】
高度経済成長期から都市化が進み専業主婦にとって評価規準は子育てだけになり、しかし夫は長時間労働により家庭に不在であることは一般的な認識ともなっている。こういった性別役割分業に基づく生活様式の見直し、<父親不在><母子密着>に対する反省、生活の質の問い直しなどの中で<家庭責任の共同化>や、父親自身の<子どもと関わる権利>が改めて検討されるようになった。
これらを視点に入れた家庭生活のあり方を考えるために親子が具体的にどのように接触できているのか、、どのような接触の仕方をしているのかについて<親子の共有時間>という側面から見てみたい。さらに今日のこうした実態を見据え、家庭科教育はどうか変わっていくべきかどうか変えていくべきなのか考察したい。
【方法】
1995年9月に行った多摩ニュータウン在住の雇用労働者夫妻の生活時間調査の対象世帯の中からつま無職、つま内職・アルバイトの世帯をとり出し夫妻の一緒にいた人、子どもとどのように接触する時間を持っているか、夫妻の生活時間、生活の重点が子どもに与える影響を分析し、以上の結果から家庭科教育の課題を考察した。なお妻無職、妻内職・アルバイトの世帯を取り上げたのは親子の共有時間が多いと考えられる世帯での課題を明らかにすることで最低限おさえるべき問題が把握できると考えたからである。
【結果及び考察】
父親の「仕事関係の人と」いる時間が母親の「一人で」いる時間、父母の「配偶者と」「子どもと」「配偶者と子どもと」いる時間に与える影響は大きく、特に平日の夫妻の「子どもと」いる時間の差は顕著である。このことは一般的にいわれるウィークディの<父親不在><母子密着>を裏づけているといえ、またその差は広がっている。しかし父親たちは週休2日制により土曜日、休日で「平日の父親不在」を補おうとしている姿勢が伺え、休日で睡眠をのぞく父子共有時間はその母子共有時間を上回り<父親と子ども>は独立に行動できるようになった。また家庭指向が強まっている。
<どこかに連れて行く>とか、<遊ぶ>といった側面が強い土曜日・休日の接触では、日常生活における家族の協力に連なる時間の共有とはなりにくい。そのため平日は父子の共有時間を持てるような生活をすることが不可欠である。なお平日では食事が「父子が共有できる時間」であった。この時間をより意識的に共有し日常生活の家族の協力を育む時間に結びつけていきたい
母親の平日の家事的生活時間は増加しているにもかかわらず家事の母子共有時間は減少している家事の時間が子どもの家事参加に使われるとすれば、現代の子どもをめぐるぐるさまざまな問題に対する積極的なアプローチの可能性を示していると見ることができる。子どもの家事参加の機会をどのように生み出していくかは今後の家庭科教育の課題である。
【まとめ】
1999年に改訂された小学校家庭科では「生活時間の有効な使い方を考え、家族に協力すること」が学習内容として示され、また高校家庭科でも生活時間の具体例からライフスタイルの形成を目指すことが解説されている。しかし分析結果によれば平日の父子共有時間の減少、家事における母子共有時間は減少している。こうした実態を認識し、それを変えていく新しいライフスタイルの創造に結びつく家庭科教育をめざしたい。
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